『大鏡』第三 伊尹伝より
行成ネタその弐 怨霊に狙われるの巻(後編)
ある日、藤原道長さまは奇妙な夢を見ました。
紫宸殿の北廂、そこは清涼殿に参上するときに必ず通る所なのだけれど、そこに人が立っているのです。
道長さまは、誰だろう?と思って、よく見ようとするのですが顔が戸の上に隠れてしまっていてはっきりと見えません。
不思議に思って
「誰だ?誰なのだ?」
何度も問いかけると
「朝成でございます」
そう応えが返ってきました。
道長さまは夢の中とはいえ非常に怖く思いましたが、ぐっとこらえて
「何故そのような所に立っておられるのか?」
「頭弁の藤原行成が参内するのを待っているのです」
人影がそう言うと道長さまは、ハッと目を覚ましました。
「今日は朝廷で行事のある日だったな…行成殿は早朝から参内してしまうだろう。いかんな」
道長さまは筆を取ると「貴殿の身の上に関して、良くない夢を見みた。今日は病欠届けでも出して物忌みを厳重になされよ。参内してはいけない。詳しいことは直接会って……」と書きつけて急いで送りました。
ところが行き違いになってしまい、行成さまは朝とても早いうちに参内してしまいました。
行成さまは神仏のご加護が強かったのでしょうか。
その日はいつもの道を通らずに北の朔平門から入って藤壺と後涼殿の間を通って清涼殿に参りました。
清涼殿にいる行成さまを見て道長さまは驚き、
「どうして参内しているのだ。手紙を差し上げたのだが御覧になっておらぬのか?実はそなたの事で嫌な夢を見たのだ。早く退出なさるが良いですぞ」
と言います。
行成さまは心当たりがあるのか、手をポンと軽く打つとどんな夢かも問わず、また二言と口をきかずにすぐさま退出してしまいました。そして祈祷などをしてしばらくの間は参内すらしませんでした。
この物の怪、すなわち藤原朝成さまの家は三条大路の北、西洞院大路の西にあります。今でも伊尹さまの一族は、ほんのちょっとの間でも足を踏み入れようとはなさらない場所です。
~~~~~~〈以下解説?〉~~~~~~
朝成の事を詳しく紹介 してるうちに
『大鏡』の怨霊ネタ前後編に分けてたってのすっかり忘れてたわ('Д')
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