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2009年5月22日 (金)

『十訓抄』八ノ一より

行成vs実方

 大納言藤原行成卿が、まだ殿上人だった時のこと。
実方の中将は一体何に腹を立てていたのでしょうか、清涼殿の殿上の間で行成と顔を合わせた途端、何も言わずに行成の冠を叩き落として庭に投げ捨ててしまったのです。
行成は少しも騒ぐことなく近くにいた主殿寮の役人を呼びました。
「冠を取ってきてくれないか」
そう言うと、冠をかぶり直し、守刀から笄を抜き出し髪の毛のほつれを整え、居ずまいを正して実方のほうへ向きました。
「一体何があったのでございますか?いきなりこんな酷い仕打ちを受けなければならない覚えが私にはないのですが…。理由をうかがった上でどうするか考えたく存じます」
行成があまりにも丁寧に言われたので、実方は拍子抜けして逃げ去ってしまいました。

 それをちょうど主上(一条天皇)が、御座所から小蔀ごしに御覧になっていて
「行成は何と立派な人物だろうか。あれ程まで落ち着いて思慮深い男だとは思わなかった」
そうおっしゃると、ちょうど蔵人頭の職があいていたので、多くの人を越えて行成を任命なさいました。
一方、実方に対しては、中将の職を取り上げて、
「歌枕の地を見て参れ」
と、お命じになると陸奥守に任じて奥州の国へ左遷なさってしまいました。
そして、実方はその地で亡くなってしまいました。。

 実方のほうこそ蔵人頭になりたいと望んでいたのに…
その願いもかなわず死んでしまったという執念がこの世に残って雀となり、殿上の間の小台盤の上に飛んできては、そこの御飯をつついているとか。
誰かが言っていたそうですよ。
 一人は我慢が足りず前途をなくし、もう一人は耐え忍んだことで褒賞に預かった。これはその典型的な例なのです。

   ~~~~~~〈以下解説〉~~~~~~

◆藤原実方(ふじわらのさねかた)
藤原実方(?~998)
藤原定(貞)時の男。母は源雅信の女。
祖父は小一条左大臣藤原師尹。
父母を早くに亡くし、叔父の藤原済時の養子となる。
歌人で中古三十六歌仙の一人。
清少納言とは恋愛関係にあった。

この『十訓抄(鎌倉中期成立)』の他に『古事談(鎌倉初期)』『源平盛衰記(鎌倉末期)』などに同ネタの話があります。
実方が陸奥守に任命されるのが正暦六(995)年(=長徳元年)の正月で、実際に陸奥国に赴任するのが陸奥九月二十七日。
この、任国赴任の際の記事が行成の日記『権記』に記されています。
ちなみに行成が蔵人頭に任命されたのは八月末。
時系列的にも、この説話は事実ではないという説が有力です。

さて、当時の男性は元服後、人前で冠や烏帽子を取って頭を見せるのを非常に恥ずかしいことだと考えていました。
例えるなら公衆の面前でいきなりズボン下げられちゃうようなものでしょうか。
なので、実方に冠叩き落されてブチ切れ当然のところを冷静に対応した行成は「すごいね!」てな話なのです。
この妙に非常に冷静でイヤミすら入ってそうな行成の言葉に萌えますv
でも、『古事談』の素朴な反応も可愛いのだ。

『古事談』一三二

 行成さま、殿上の間で口ゲンカし、栄達した話

 一条天皇の御代、実方と行成が殿上の間で口論になりました。
実方は行成の冠をつかむと、小庭に投げ捨てて、プイと向こうへ行ってしまいました。
行成は少しも取り乱さず、静かに主殿司の役人を呼んで冠を取ってもらい、冠についた砂をはらってかぶると
「酷い事をなさる方だな‥‥」
ポツリ呟きました。

 主上は小蔀からその様子を御覧になっていて、
「行成は重用すべき者だ」
そう思って蔵人頭に任じ(当時は備後介。前の兵衛佐)、
実方には
「歌枕の地を見て参れ」
そうおっしゃると陸奥守に任じたそうです。
そして、実方は任国で亡くなってしまったとか。

 行成は蔵人頭に任じられ、弁官にも任じられましたが、最初の頃は失敗も多かったそうです。
次第に色々な事を人に尋ねたり、一生懸命勉強したりしたので、後にはその辺の人達に劣らぬ博識な方になりました。
長年弁官として文書関係の仕事に携わっていたからでしょうね。

この殿上での二人のケンカ、
どうして実方は行成をこうも目の敵にしていたのでしょう?
蔵人頭のライバルということもありましたが、実はもうひとつ…
歌人実方のプライドにかかわる逸話があるんです。
それについては、また次回にw

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